ATRI -My Dear Moments-でTVアニメ化を果たしたANIPLEX.EXEの第二弾企画として制作された『ヒラヒラヒヒル』
シナリオライターは「キラ☆キラ」「SWAN SONG」「CARNIVAL」などを手掛けた瀬戸口廉也 氏であり、彼の人の心理描写を色濃く描くシナリオは健在で、長年のファンも非常に楽しめる内容であったように思います。
そんな本作ですが、ダウンロード版のみでの販売となっていて、DMM・DLsite・Steamから購入することができます。
お得に購入できるのは、ポイント還元や割引クーポンに積極的なDLsiteです。他の販売元でもセールが行われているときがあるので、一応チェックしておくことをおすすめします。
ヒラヒラヒヒル
本作は、死んだ人間が蘇る「風爛症」と呼ばれる架空の病気を題材にしています。蘇った人間は、知性や記憶・認識力が衰え、コミュニケーションが困難となるばかりか、肉体も代謝が衰え、やがて腐敗していく(公式ホームページより)とされていますが、「体が腐敗する」というフィクションの要素を除けば、現在の認知症の症状に近いと感じられる部分もあります。
このようにフィクションでありながら、現代社会にも通じる問題提起やメッセージ性が込められている点が、本作の最大の魅力と言えるでしょう。
たとえば、本作では風爛症に罹患した患者を私宅看護という形で自宅で看護する様子が描かれています。
私宅看護では、親族が風爛症に罹患したことを受け入れられず、適切な医療を拒否するケースや、真面目に看護に取り組んでいてもコミュニケーションが取れない患者との関わりに苦しみ、医療費の負担から看護者自身がダメージを受ける状況などが描かれていました。
これらは、自宅での看護を余儀なくされた人々が直面する課題そのものであり、現代社会への強い問題提起となっています。
また、本作の登場人物たちは「風爛症」に関わることでさまざまな苦悩を経験し、時には人生のどん底に突き落とされることもありました。
しかし、その中でも折れない人間の強さが確かに描かれていたのです。たとえ風爛症患者になっても、自分の仕事と向き合い強く生きていく姿や、大切な人が風爛症患者になっても「私だけはずっとそばにいます」と語るキャラクターの言葉から、優しさが深く感じられました。
総括すると、現代の看護に対する問題提起といった社会的な側面を持ちつつ、人間の強さや優しさといった物語性の面でも、読者を十分に満足させる内容でした。
令和を代表する傑作ヴィジュアルノベルであることに、疑いの余地はありません!以上
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